建物の登記事項証明書を見ると、「主である建物」のほかに「附属建物」と記載されていることがあります。
また、自宅の敷地内に車庫、物置、倉庫、納屋、離れなどがある場合に、
「これは登記が必要なの?」
「車庫や物置も建物として登記されるの?」
「附属建物と未登記建物は何が違う?」
「古い車庫を壊したら滅失登記が必要?」
「固定資産税には載っているけど登記には載っていないのはなぜ?」
と疑問に感じる方も多いです。
結論からいうと、附属建物とは、主たる建物と一体として利用される別棟の建物をいいます。
たとえば、自宅の母屋に対する車庫、物置、倉庫、納屋などが附属建物として登記されることがあります。
ただし、敷地内にあるすべての小屋や設備が必ず附属建物になるわけではありません。
この記事では、附属建物とは何か、主である建物との違い、附属建物になりやすい建物の種類、登記が必要になるケース、未登記のリスク、取り壊した場合の注意点をわかりやすく解説します。
附属建物とは?
附属建物とは、主である建物に附属して利用される建物のことです。
たとえば、敷地内に住宅と車庫がある場合、住宅を「主である建物」、車庫を「附属建物」として登記することがあります。
登記上は、建物ごとに次のような内容が記録されます。
- 種類
- 構造
- 床面積
- 所在
- 家屋番号
- 主である建物か附属建物か
不動産登記法では、建物を新築した場合や、登記されていない建物の所有権を取得した場合には、一定期間内に建物表題登記を申請する義務が定められています。
また、登記されている建物の表題部の内容に変更があった場合には、変更登記が必要になることがあります。
法令を確認したい方は、e-Gov法令検索「不動産登記法」を参考にしてください。
「附属建物」と「付属建物」はどちらが正しい?
一般的には「付属建物」と書かれることもあります。
ただし、登記実務では「附属建物」という表記が使われます。
意味としてはほぼ同じように使われることが多いですが、登記の記事や法務局関係の話では「附属建物」と表記するのが正確です。
この記事でも、登記上の表現に合わせて「附属建物」と記載します。
主である建物と附属建物の違い
附属建物を理解するには、「主である建物」との関係を見る必要があります。
主である建物とは
主である建物とは、その不動産の中心になる建物です。
たとえば、住宅地であれば母屋となる居宅、工場敷地であれば工場本体、店舗用地であれば店舗本体などが主である建物になることが多いです。
附属建物とは
附属建物は、主である建物と一体として使われる建物です。
たとえば、住宅に附属する車庫や物置、工場に附属する倉庫や機械室、店舗に附属する倉庫などが考えられます。
重要なのは、単に同じ敷地にあるかどうかだけではありません。
主である建物と利用上の関係があるか、独立した建物として扱うべきかを確認する必要があります。
附属建物の種類
附属建物には、さまざまな種類があります。
不動産登記規則では、建物の種類について、その主たる用途により定める考え方が示されています。詳しくは、e-Gov法令検索「不動産登記規則」を確認してください。
ここでは、実務で相談されやすい附属建物の種類を整理します。
車庫
車庫は、附属建物としてよく出てくる代表例です。
自宅敷地内にある車庫、ガレージ、シャッター付きの自動車保管スペースなどが該当することがあります。
ただし、すべてのカーポートが登記されるわけではありません。
屋根だけの簡易なカーポートのように、壁で囲まれておらず、建物としての独立性が弱いものは、登記対象にならないことがあります。
一方で、基礎があり、屋根や壁で囲まれ、土地に定着し、自動車を保管する建物として利用されている場合は、車庫として登記対象になる可能性があります。
物置
物置も附属建物としてよく見られます。
住宅の敷地内にある別棟の物置、農家の道具置場、家庭用品や工具を保管する建物などです。
ただし、小型で移動できる簡易物置や、地面に固定されていないものは、建物として登記されないことがあります。
反対に、基礎があり、屋根・壁があり、継続的に物を保管するために利用される建物であれば、物置として登記される可能性があります。
倉庫
倉庫は、物品や資材を保管する建物です。
事業用の倉庫、店舗に附属する在庫保管庫、工場に附属する資材倉庫などが考えられます。
住宅の敷地内にある大きめの保管建物も、実態によっては倉庫や物置として判断されることがあります。
倉庫は、建物の規模や用途によって、主である建物として扱われる場合もあります。
たとえば、倉庫業や物流施設として単独で利用されている建物であれば、附属建物ではなく主である建物になることがあります。
納屋
農家や古い住宅地では、納屋が附属建物として登記されていることがあります。
農機具、収穫物、資材などを保管する建物です。
登記上の種類としては、実態に応じて物置、倉庫、農作業関係の建物などとして扱われることがあります。
古い納屋では、登記簿上の表示と現況が一致していないこともあります。
相続や売却の際に、登記されている納屋が実際に残っているか、すでに取り壊されているかを確認することが大切です。
離れ
母屋とは別に建っている「離れ」も、附属建物として問題になることがあります。
たとえば、母屋に附属して使われる客間、子ども部屋、趣味部屋、簡易な居住スペースなどです。
ただし、離れが独立した住宅として使われている場合は、附属建物ではなく別の主たる建物として扱うべきケースもあります。
水回り、玄関、利用実態、生活の独立性などを見て判断することになります。
便所・浴室
古い住宅では、便所や浴室が母屋とは別棟になっていることがあります。
このような別棟の便所や浴室が、附属建物として登記されていることがあります。
現在ではあまり多くありませんが、古い登記簿を見ると、附属建物として記載されていることがあります。
建て替えや取り壊しの際には、母屋だけでなく、これらの附属建物が登記されていないか確認する必要があります。
作業所
住宅や工場、事業用建物に附属する作業所も、附属建物として登記されることがあります。
たとえば、木工作業場、農作業場、小規模な修理作業場、製造補助スペースなどです。
ただし、作業所が独立して事業の中心施設として使われている場合は、主たる建物として判断されることもあります。
機械室・ポンプ室・電気室
マンション、工場、事業所、公共施設などでは、機械室、ポンプ室、電気室、ボイラー室などが附属建物として登記されることがあります。
これらは、人が居住するための建物ではありませんが、主である建物の機能を支えるために設置される建物です。
建物としての定着性や独立性がある場合、附属建物として扱われることがあります。
守衛所・管理棟
工場、学校、病院、事業所、マンション敷地などでは、守衛所や管理棟が附属建物になることがあります。
主である建物の管理・警備のために設置されている場合です。
規模が大きく、単独で独立した用途を持つ場合は、主たる建物として扱われる可能性もあります。
温室・鶏舎・畜舎など
農業用施設では、温室、鶏舎、畜舎、堆肥舎、農機具庫などが問題になることがあります。
ただし、ビニールハウスのように構造が簡易で、容易に移動・撤去できるものは、建物として登記されないこともあります。
一方で、基礎があり、土地に定着し、屋根や壁で区画され、継続的に利用される施設であれば、建物として判断される可能性があります。
附属建物として登記されるかの判断基準
車庫や物置が附属建物として登記されるかどうかは、名前だけで決まるわけではありません。
一般的には、次のような観点から判断します。
土地に定着しているか
建物として登記されるには、土地に定着していることが重要です。
基礎がある、簡単に移動できない、継続的に設置されているといった事情が関係します。
反対に、地面に置いてあるだけの簡易物置や、移動できるコンテナなどは、建物として扱われないことがあります。
屋根や壁で区画されているか
屋根があり、外部と区画されているかも重要です。
屋根だけのカーポートのように、周囲が開放されているものは、登記上の建物として扱われにくい場合があります。
一方で、壁やシャッターで囲まれ、内部空間として利用できるガレージなどは、車庫として登記される可能性があります。
用途として独立して使えるか
物を保管する、車を入れる、作業する、管理するなど、一定の用途に使える状態かどうかも見ます。
単なる工作物や設備ではなく、建物として利用できる空間かどうかがポイントです。
主である建物との関係があるか
附属建物は、主である建物と利用上の関係がある建物です。
同じ敷地にあっても、用途が完全に独立している場合は、附属建物ではなく別個の主たる建物として考えることがあります。
附属建物が登記されるケース
附属建物が登記されるケースとして多いのは、次のような場面です。
新築時に母屋と一緒に車庫を建てた場合
住宅を新築する際、同じ敷地内に車庫や物置も建てることがあります。
この場合、主である建物を居宅、附属建物を車庫や物置として、建物表題登記に反映することがあります。
既存の建物に後から車庫や物置を建てた場合
すでに住宅が登記されている状態で、後から別棟の車庫や物置を建てた場合は、建物表題部変更登記が必要になることがあります。
主である建物に附属建物が追加されたことになるためです。
古い附属建物が登記簿に残っている場合
昔の車庫や物置、納屋、便所などが登記簿に附属建物として残っていることがあります。
現地にはすでに存在しないのに、登記簿上は附属建物が残っているケースです。
この場合、建物滅失登記や建物表題部変更登記が必要になることがあります。
附属建物を取り壊した場合
附属建物を取り壊した場合も注意が必要です。
母屋が残っていても、登記されている附属建物だけを取り壊したのであれば、登記簿の内容を現況に合わせる必要があります。
たとえば、登記簿上、
主である建物:居宅
附属建物:車庫
と記載されていて、車庫だけを取り壊した場合、車庫が現存しない状態になります。
この場合、建物全体の滅失登記ではなく、附属建物の滅失を反映する変更登記が必要になることがあります。
母屋も車庫もすべて取り壊した場合は、建物滅失登記の問題になります。
未登記の附属建物を放置するリスク
附属建物が未登記のまま放置されていることもあります。
普段生活しているだけではすぐに問題にならないこともありますが、次のような場面で指摘される可能性があります。
売却時に問題になる
土地建物を売却するとき、登記簿と現況が一致しているか確認されます。
登記されていない車庫や物置がある場合、買主や不動産会社から説明を求められることがあります。
大きな車庫や倉庫が未登記の場合、売却前に登記の整理が必要になることもあります。
融資や担保評価に影響する
金融機関が融資を行う場合、建物の登記内容と現況を確認することがあります。
登記されていない附属建物があると、追加資料や是正を求められる場合があります。
相続時に建物の状況がわかりにくくなる
親や祖父母の代で建てた車庫や納屋が未登記のまま残っていると、相続人が後から状況を確認するのが大変になります。
固定資産税の課税明細には載っているのに、法務局の登記簿には載っていないこともあります。
固定資産税台帳と登記簿は別の制度であるため、固定資産税を払っているから登記されているとは限りません。
附属建物と固定資産税の関係
附属建物についてよくある誤解が、「固定資産税に載っているなら登記もされているはず」というものです。
これは正しくありません。
固定資産税は市区町村が課税のために管理する情報です。
一方、登記は法務局で管理される不動産の表示・権利に関する情報です。
そのため、
固定資産税には車庫が載っている
↓
でも登記簿には車庫が載っていない
ということがあります。
逆に、登記簿には古い附属建物が残っているのに、固定資産税上はすでに課税されていないということもあります。
売却、相続、解体の前には、固定資産税資料と登記事項証明書の両方を確認することが大切です。
土地家屋調査士に相談した方がよいケース
次のような場合は、土地家屋調査士に相談するのがおすすめです。
- 車庫や物置が登記されているかわからない
- 附属建物が登記簿に載っているか確認したい
- 固定資産税には載っているが登記簿にない
- 古い車庫や納屋を取り壊した
- 母屋とは別に倉庫や作業所を建てた
- 増築や別棟の建物を建てた
- 建物を売却する予定がある
- 相続した建物の登記状況がわからない
- 未登記建物を整理したい
- 建物滅失登記や表題部変更登記が必要か知りたい
土地家屋調査士は、建物の所在、種類、構造、床面積、登記状況を確認し、建物表題登記、建物表題部変更登記、建物滅失登記などを扱う専門家です。
附属建物が登記対象になるかどうかは、建物の構造や利用状況によって判断が変わるため、自己判断が難しい場合は早めに相談しましょう。
よくある質問
Q. 附属建物とは何ですか?
附属建物とは、主である建物に附属して利用される別棟の建物です。
住宅に対する車庫、物置、倉庫、納屋などが代表例です。
Q. 車庫は必ず登記が必要ですか?
必ずではありません。
屋根だけの簡易なカーポートなどは、登記対象にならないことがあります。
一方で、土地に定着し、屋根や壁があり、車庫として利用できる建物は登記対象になる可能性があります。
Q. 物置は登記が必要ですか?
物置の構造や設置状況によります。
基礎があり、土地に定着し、屋根や壁で囲まれて継続利用される物置は、登記対象になる可能性があります。
移動できる簡易物置は、登記されないことがあります。
Q. 附属建物を取り壊したら滅失登記が必要ですか?
母屋も附属建物もすべて取り壊した場合は、建物滅失登記が必要になります。
母屋は残っていて、登記されている附属建物だけを取り壊した場合は、附属建物の滅失を反映する変更登記が必要になることがあります。
Q. 固定資産税に載っている附属建物は登記されていますか?
必ずしも登記されているとは限りません。
固定資産税の情報と法務局の登記情報は別の制度です。
固定資産税には載っているが、登記簿には載っていない未登記建物もあります。
まとめ|附属建物は車庫・物置・倉庫などが登記されることがある
附属建物とは、主である建物と一体として利用される別棟の建物です。
住宅に対する車庫、物置、倉庫、納屋、離れなどが代表例です。
重要なポイントは次のとおりです。
- 附属建物は主である建物に附属して利用される建物
- 登記上は「付属建物」ではなく「附属建物」と表記される
- 車庫、物置、倉庫、納屋、離れなどが附属建物になることがある
- カーポートや簡易物置は登記対象にならないことがある
- 建物として登記されるかは、定着性、外気との区画、用途性などを確認する
- 後から車庫や物置を建てた場合は表題部変更登記が必要になることがある
- 附属建物を取り壊した場合も登記の整理が必要になることがある
- 固定資産税に載っていても登記されているとは限らない
- 売却、相続、解体前には登記簿と現況を確認することが大切
「車庫や物置が登記されているかわからない」
「古い納屋や倉庫が登記簿に残っている」
「固定資産税には載っているのに登記簿にない」
「附属建物を取り壊したので登記を整理したい」
このような場合は、土地家屋調査士に相談し、附属建物の登記状況を確認しておきましょう。

監修:北川 巧(土地家屋調査士)
石川県会 第698号 / 所在地:石川県小松市 石川県土地家屋調査士
独立2年目ながらも持ち前の若さと体力を活かして、顧客への迅速で新設な対応で、日々業務に取り組んでいます。不動産の表示に関する登記や土地家屋調査士の業務について一般の方目線で分かりやすくアドバイス、解説します。

監修:北川 巧
(土地家屋調査士)
石川県会 第698号 / 所在地:石川県小松市 石川県土地家屋調査士
独立2年目ながらも持ち前の若さと体力を活かして、顧客への迅速で新設な対応で、日々業務に取り組んでいます。不動産の表示に関する登記や土地家屋調査士の業務について一般の方目線で分かりやすくアドバイス、解説します。
