建物を売却しようとしたときに、不動産会社や買主、金融機関から「登記簿の面積と実際の建物面積が違います」と指摘されることがあります。
特に多いのが、過去に増築した部分が登記に反映されていないケースです。
たとえば、
「昔、親が増築した部分が登記されていない」
「登記簿では80㎡なのに、実際は110㎡くらいある」
「固定資産税の課税明細と登記簿の面積が違う」
「未登記増築があると売却できないの?」
「売却前に建物表題部変更登記をした方がいい?」
このような相談は、相続した実家や古い住宅を売却する場面でよくあります。
結論からいうと、増築部分が未登記のままでも売却自体が絶対にできないわけではありません。
ただし、登記簿上の床面積と現況が大きく違う場合、買主への説明、金融機関の融資、売買契約、引渡し前の登記整理で問題になることがあります。
この記事では、増築部分が未登記の場合に売却できるのか、登記上の面積と現況が違う場合のリスク、売却前に確認すべきこと、建物表題部変更登記が必要になるケースをわかりやすく解説します。
増築部分が未登記とは?
増築部分が未登記とは、建物を増築したにもかかわらず、その増築内容が法務局の登記簿に反映されていない状態をいいます。
たとえば、登記簿上は次のように記載されているとします。
| 登記簿上の内容 | 実際の現況 |
| 1階 60㎡ | 1階 75㎡ |
| 2階 30㎡ | 2階 45㎡ |
| 合計 90㎡ | 合計 120㎡ |
このように、実際には増築されているのに、登記簿上の床面積が昔のままになっている状態です。
この場合、建物の表題部に記載されている床面積が現況と一致していないため、建物表題部変更登記が必要になることがあります。
なぜ増築部分が未登記のままになるのか
増築部分が未登記になる理由はいくつかあります。
特に古い住宅や相続した実家では、所有者本人も把握していないことがあります。
| よくある原因 | 内容 |
| 親や祖父母の代で増築していた | 相続人が増築の経緯を知らない |
| 小規模な増築だから登記不要だと思っていた | サンルーム、物置、部屋の増築などで見落とされやすい |
| 建築確認は取ったが登記していない | 建築確認と建物登記は別の手続き |
| 固定資産税には反映されている | 市区町村の課税情報と法務局の登記情報は別制度 |
| 売却時まで問題にならなかった | 普段の生活では気づきにくい |
固定資産税の課税明細に増築部分が反映されているからといって、登記も自動で直るわけではありません。
固定資産税は市区町村の制度、建物登記は法務局の制度です。
そのため、固定資産税上の面積と登記簿上の床面積が違うことがあります。
増築部分が未登記でも売却できる?
増築部分が未登記でも、売却自体が必ず不可能になるわけではありません。
ただし、売却の進め方には注意が必要です。
主なパターンは次の3つです。
| 売却時の対応 | 内容 |
| 売却前に登記を直す | 建物表題部変更登記をしてから売却する |
| 未登記増築を説明して売却する | 買主に現況と登記の違いを説明して売却する |
| 解体前提で売却する | 古家付き土地や解体予定として整理する |
実務上は、買主が住宅ローンを利用する場合や、建物として評価して購入する場合には、売却前に登記を整理するよう求められることがあります。
一方で、買主が現金購入する場合や、建物を解体予定で購入する場合は、未登記増築があっても説明したうえで売却できるケースもあります。
売却時に問題になりやすい理由
増築部分が未登記だと、売却時にいくつかの問題が出ることがあります。
買主が不安を感じる
買主から見ると、登記簿と実際の建物が違う状態は不安材料になります。
「どこまでが正式に登記されている建物なのか」
「違法建築ではないのか」
「後から登記費用がかかるのではないか」
といった疑問が出やすくなります。
そのため、売主側で事前に状況を整理しておくことが大切です。
金融機関の融資審査に影響する
買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関は建物の登記内容や担保評価を確認します。
登記簿上の床面積と現況が大きく違うと、金融機関から説明や是正を求められることがあります。
場合によっては、融資実行前に建物表題部変更登記を求められることもあります。
重要事項説明や契約条件に影響する
不動産売買では、買主に対して物件の状況を説明する必要があります。
増築部分が未登記であることは、買主にとって重要な情報です。
説明しないまま売却すると、後から「聞いていなかった」とトラブルになる可能性があります。
売却前に確認すべきこと
増築部分が未登記かもしれない場合、まずは資料と現況を確認します。
【売却前の確認フロー】
登記事項証明書を取得する
↓
固定資産税課税明細書を確認する
↓
建物の現況を確認する
↓
登記簿の床面積と現況を比較する
↓
増築部分・未登記部分の有無を整理する
↓
不動産会社・土地家屋調査士に相談する
↓
売却前に登記を直すか判断する
特に、登記事項証明書と固定資産税課税明細書の両方を確認することが重要です。
どちらか一方だけでは、建物の状態を正確に把握できないことがあります。
建物表題部変更登記が必要になるケース
増築によって登記簿上の床面積と現況が変わっている場合、建物表題部変更登記が必要になることがあります。
建物表題部変更登記とは、登記されている建物の表題部の内容を現況に合わせて変更する登記です。
増築の場合は、主に床面積の変更が問題になります。
| ケース | 登記が必要になりやすい理由 |
| 部屋を増築した | 床面積が増えているため |
| 2階を増築した | 各階の床面積が変わるため |
| サンルームを建てた | 構造によって床面積に含まれる可能性があるため |
| 別棟の車庫を建てた | 附属建物として登記が必要になることがあるため |
| 店舗部分を増築した | 種類や床面積の変更が関係するため |
| 倉庫・物置を建てた | 建物性や附属建物の判断が必要になるため |
ただし、すべての増築部分が必ず登記対象になるわけではありません。
簡易なカーポートや移動可能な物置のように、登記上の建物と判断されないものもあります。
建物として登記対象になるかどうかは、定着性、外気との遮断性、用途性などを見て判断します。
売却前に登記を直すメリット
売却前に建物表題部変更登記をしておくと、次のようなメリットがあります。
| メリット | 内容 |
| 買主に説明しやすい | 登記簿と現況が一致しているため安心感がある |
| 融資審査が進みやすい | 金融機関からの指摘を減らしやすい |
| 売買契約後のトラブルを防ぎやすい | 未登記増築について後から揉めにくい |
| 物件資料が整理される | 建物の面積・構造・種類が明確になる |
| 売却価格の説明がしやすい | 実際の建物面積を登記上も示せる |
特に、建物を評価して売却する場合は、登記簿と現況を合わせておくメリットが大きいです。
売却前に登記を直さない場合の注意点
一方で、必ず売却前に登記を直さなければならないとは限りません。
建物を解体予定で売る場合や、買主が未登記増築を了承している場合は、現況のまま売却するケースもあります。
ただし、その場合でも、次の点には注意が必要です。
- 未登記増築があることを買主に説明する
- 売買契約書や重要事項説明で扱いを整理する
- 誰が登記費用を負担するか確認する
- 引渡し後に買主が困らないようにする
- 解体予定の場合は滅失登記や固定資産税の扱いも確認する
未登記増築を隠したまま売却するのは避けるべきです。
後からトラブルになる可能性があります。
必要書類の例
増築部分を反映する建物表題部変更登記では、状況に応じて次のような書類が必要になることがあります。
| 書類 | 内容 |
| 登記事項証明書 | 現在の登記内容を確認する |
| 建築確認済証 | 増築工事の内容確認に使うことがある |
| 検査済証 | 工事完了や適法性確認の資料になることがある |
| 工事完了引渡証明書 | 工事業者が増築工事を行ったことを示す |
| 固定資産税課税明細書 | 市区町村が把握している家屋情報を確認する |
| 建物図面・各階平面図 | 建物の形状や床面積を示す |
| 所有者の住民票など | 申請人の住所確認に使うことがある |
| 委任状 | 土地家屋調査士に依頼する場合に必要 |
古い増築では、建築確認済証や工事関係書類が残っていないこともあります。
その場合でも、土地家屋調査士が現地調査や資料確認を行い、必要な対応を検討します。
費用と期間の目安
増築部分を反映する建物表題部変更登記の費用は、建物の状況によって変わります。
| 内容 | 費用目安 |
| 比較的シンプルな床面積変更 | 8万円〜15万円程度 |
| 図面作成が必要な変更登記 | 10万円〜20万円程度 |
| 古い建物で資料が少ないケース | 15万円〜30万円程度 |
| 附属建物や複数建物の整理が必要 | 20万円以上になることもある |
期間は、資料がそろっていれば1週間〜3週間程度で進むことがあります。
ただし、建物が古い、資料がない、現況確認に時間がかかる、売買スケジュールが迫っているといった場合は、余裕を持って相談することが大切です。
土地家屋調査士に相談した方がよいケース
次のような場合は、土地家屋調査士に相談するのがおすすめです。
- 登記簿の床面積と現況が違う
- 増築部分が登記されているかわからない
- 固定資産税の面積と登記簿の面積が違う
- 売却前に建物の登記を整理したい
- 買主や金融機関から未登記増築を指摘された
- 古い増築で資料が残っていない
- 附属建物や車庫、物置もある
- 建物図面や各階平面図を作成する必要がある
- 解体予定か売却前登記かで迷っている
土地家屋調査士は、建物の表示に関する登記を扱う専門家です。
増築部分の床面積、構造、種類、附属建物の有無を確認し、売却前にどの登記が必要かを整理できます。
よくある質問
Q. 増築部分が未登記でも売却できますか?
売却自体が絶対にできないわけではありません。
ただし、買主への説明、金融機関の融資、売買契約の条件に影響することがあります。
売却前に登記を整理した方がよいケースもあります。
Q. 登記簿の面積と固定資産税の面積が違うのはなぜですか?
固定資産税は市区町村の課税制度、登記は法務局の制度です。
増築部分が固定資産税には反映されていても、登記簿には反映されていないことがあります。
Q. 増築部分は必ず登記しないといけませんか?
登記されている建物の床面積など表題部の内容に変更があった場合は、建物表題部変更登記が必要になることがあります。
ただし、登記対象になる建物かどうかは、構造や利用状況によって判断します。
Q. 売却前に登記を直す費用は誰が負担しますか?
一般的には売主側で整理することが多いですが、売買契約の内容によって変わります。
誰が費用を負担するかは、不動産会社や買主と事前に確認しましょう。
Q. 古い増築で書類がない場合でも登記できますか?
書類が不足していても、現地調査や固定資産税資料、その他の資料をもとに対応できる場合があります。
土地家屋調査士に相談し、利用できる資料を確認しましょう。
まとめ|増築部分が未登記なら売却前に登記簿と現況を確認しよう
増築部分が未登記でも、売却自体が必ずできないわけではありません。
しかし、登記簿上の床面積と現況が大きく違う場合、売却時に問題になることがあります。
重要なポイントは次のとおりです。
- 増築部分が未登記だと、登記簿の床面積と現況が一致しない
- 固定資産税には反映されていても、登記簿が自動で直るわけではない
- 売却時に買主、不動産会社、金融機関から指摘されることがある
- 住宅ローン利用がある場合は、登記整理を求められることがある
- 売却前に建物表題部変更登記をすると説明しやすい
- 解体予定や現金売買では、説明したうえで現況売却するケースもある
- 未登記増築を隠して売るのはトラブルの原因になる
- 古い増築で資料がない場合でも対応できることがある
- 判断に迷う場合は土地家屋調査士に相談する
「登記簿の面積と実際の建物面積が違う」
「増築部分が未登記かもしれない」
「売却前に建物の登記を整理したい」
「買主や金融機関から指摘された」
このような場合は、売買契約を進める前に、登記事項証明書、固定資産税資料、現況を確認し、必要に応じて土地家屋調査士へ相談しましょう。

監修:北川 巧(土地家屋調査士)
石川県会 第698号 / 所在地:石川県小松市 石川県土地家屋調査士
独立2年目ながらも持ち前の若さと体力を活かして、顧客への迅速で新設な対応で、日々業務に取り組んでいます。不動産の表示に関する登記や土地家屋調査士の業務について一般の方目線で分かりやすくアドバイス、解説します。

監修:北川 巧
(土地家屋調査士)
石川県会 第698号 / 所在地:石川県小松市 石川県土地家屋調査士
独立2年目ながらも持ち前の若さと体力を活かして、顧客への迅速で新設な対応で、日々業務に取り組んでいます。不動産の表示に関する登記や土地家屋調査士の業務について一般の方目線で分かりやすくアドバイス、解説します。
