土地の一部だけ売るには?分筆登記が必要な理由・流れ・費用を解説

広い土地を所有していると、「土地の一部だけ売りたい」と考えることがあります。

たとえば、

「自宅の庭の一部だけ売りたい」
「親から相続した土地の一部を売却したい」
「隣地の人から土地の一部を買いたいと言われた」
「道路沿いの一部だけを事業用地として売りたい」
「土地を分けて子どもに渡したい」

このような場面では、土地をそのまま一部だけ売れるのか疑問に感じる方も多いはずです。

結論からいうと、土地の一部だけを売る場合、通常は売る部分を分筆登記して、登記上も別の土地にする必要があります。

登記上1筆の土地のままでは、「この土地のうち南側だけ」「庭の一部だけ」といった形で、明確に所有権を移転することが難しいためです。

この記事では、土地の一部だけを売るときに分筆登記が必要な理由、手続きの流れ、確定測量、費用、期間、注意点を土地家屋調査士の視点でわかりやすく解説します。

目次

土地の一部だけ売ることはできる?

土地の一部だけを売ること自体は可能です。

ただし、売却する部分を登記上明確にする必要があります。

土地は、登記簿上「1筆」「2筆」という単位で管理されています。

たとえば、登記簿上1筆の土地が300㎡ある場合、そのうち100㎡だけを売りたいのであれば、その100㎡部分を別の土地として分ける必要があります。

この手続きが分筆登記です。

分筆登記によって、もともと1筆だった土地を複数の土地に分けます。

そのうえで、売却する土地について所有権移転登記を行う流れになります。

不動産登記の基本的な制度について確認したい方は、e-Gov法令検索「不動産登記法」も参考になります。

なぜ分筆登記が必要なのか

土地の一部売却で分筆登記が必要になる主な理由は、売る範囲を登記上はっきりさせるためです。

売る土地の範囲を明確にするため

土地の一部を売る場合、「どこからどこまでを売るのか」を明確にしなければなりません。

口頭で「このあたりまで」と決めただけでは、後からトラブルになる可能性があります。

分筆登記を行うことで、売却する土地に新しい地番が付けられ、登記簿上も独立した土地として扱われます。

買主が所有権移転登記を受けるため

土地を売買した場合、買主は自分名義に所有権移転登記を行います。

しかし、売却部分が登記上独立していなければ、その部分だけを買主名義にすることができません。

そのため、土地の一部を売る前提として、売却部分を分筆する必要があります。

境界トラブルを防ぐため

土地の一部売却では、売主と買主だけでなく、隣地所有者との境界も関係します。

売却する部分の境界があいまいなままだと、買主が取得した土地の範囲がわからず、後から境界トラブルになることがあります。

分筆前に測量を行い、境界を確認しておくことが大切です。

土地の一部売却で必要になる手続き

土地の一部を売る場合、一般的には次のような流れで進みます。

1. 売りたい範囲を決める

まず、どの部分を売りたいのかを大まかに決めます。

たとえば、道路側の一部、隣地に接する一部、庭の一部、駐車場部分などです。

ただし、この時点ではあくまで希望範囲です。

実際に分筆できるかどうかは、測量や法令上の確認が必要です。

2. 土地家屋調査士に相談する

土地の一部売却では、早い段階で土地家屋調査士に相談するのがおすすめです。

土地家屋調査士は、土地の測量、境界確認、分筆登記を扱う専門家です。

売却したい範囲、土地の形状、道路との関係、隣地との境界、既存資料の有無を確認し、分筆できるかを検討します。

3. 資料調査を行う

分筆登記の前には、法務局資料や行政資料を確認します。

主な資料は次のとおりです。

  • 登記事項証明書
  • 公図
  • 地積測量図
  • 過去の測量図
  • 境界確認書
  • 道路台帳
  • 官民境界資料
  • 建築関係資料

過去に測量されている土地であれば、資料が残っていることがあります。

一方で、古い土地では地積測量図がなかったり、公図と現地が合わなかったりすることもあります。

4. 現地測量を行う

資料調査のあと、現地で土地を測量します。

現地では、境界杭、ブロック塀、フェンス、道路、側溝、隣地との位置関係などを確認します。

売却する部分だけでなく、土地全体の境界を確認する必要があることもあります。

5. 隣地所有者と境界確認を行う

分筆登記では、土地全体の境界確認が重要です。

隣地所有者や道路管理者と立会いを行い、境界確認書を作成することがあります。

特に、土地を売却する場合は、買主に安心して引き渡すためにも、境界を明確にしておくことが大切です。

6. 分筆案を作成する

測量結果をもとに、どのように土地を分けるか分筆案を作成します。

分筆後の土地の面積、形状、接道、利用しやすさなどを確認します。

売却する土地だけでなく、残る土地が使いにくくならないかも重要です。

7. 分筆登記を申請する

分筆案が決まり、必要書類が整ったら、土地家屋調査士が法務局へ分筆登記を申請します。

登記が完了すると、もともと1筆だった土地が複数の土地に分かれます。

その後、売却する土地について売買契約や所有権移転登記を進めます。

一部売却で注意すべきポイント

土地の一部を売る場合は、単に線を引いて分ければよいわけではありません。

注意すべき点がいくつかあります。

残る土地の接道を確認する

一部を売却した結果、残る土地が道路に接しなくなると、建て替えや利用に大きな支障が出ることがあります。

建物を建てる土地は、原則として建築基準法上の道路に一定以上接している必要があります。

売る土地だけでなく、残る土地の接道条件も必ず確認しましょう。

残る土地が使いにくくならないか確認する

土地を一部売った結果、残地が細長くなったり、駐車場が取れなくなったり、建物の配置が難しくなったりすることがあります。

将来の建て替え、売却、相続まで考えて分筆することが大切です。

境界が未確定だと時間がかかる

境界杭がない、隣地と境界確認ができていない、道路との官民境界が未確認という場合は、分筆までに時間がかかることがあります。

売買契約の予定がある場合は、早めに測量へ着手しましょう。

農地の場合は農地法の確認が必要

売却する土地が田や畑の場合は、農地法の許可や届出が関係することがあります。

農地を宅地や駐車場として売る場合、分筆登記だけでは足りないケースがあります。

農地転用については、農業委員会や行政書士への確認も必要です。

共有名義の場合は共有者との調整が必要

土地が共有名義の場合は、共有者との調整が重要です。

分筆後にどの土地を誰が持つのか、一部を売却して売却代金をどう分けるのかなど、事前に合意しておく必要があります。

登記や売買の場面では、司法書士や弁護士の関与が必要になることもあります。

土地の一部売却にかかる費用

土地の一部売却では、分筆登記や測量に費用がかかります。

土地家屋調査士に依頼する場合、分筆登記を含む測量費用は、一般的に30万円〜80万円程度が目安です。

ただし、次のような場合は費用が上がることがあります。

  • 土地が広い
  • 隣地の数が多い
  • 官民境界確認が必要
  • 境界杭がない
  • 地積測量図がない
  • 隣地立会いに時間がかかる
  • 複数筆をまとめて測量する
  • 高低差や道路条件が複雑

また、売買に伴う所有権移転登記や抵当権の抹消などは、司法書士費用や登録免許税が別途かかります。

土地の一部売却にかかる期間

土地の一部を売る場合、分筆登記までに1か月〜3か月程度かかることがあります。

ただし、境界確認がスムーズに進まない場合や、官民境界確認が必要な場合は、それ以上かかることもあります。

特に、次のようなケースでは期間が長くなりやすいです。

  • 隣地所有者が遠方に住んでいる
  • 相続未了の隣地がある
  • 道路との境界が未確定
  • 古い土地で資料が少ない
  • 農地転用が関係する
  • 分筆案の調整に時間がかかる

買主が決まってから慌てて測量を始めると、引渡し時期に間に合わないことがあります。

売却を考え始めた段階で、早めに相談しておくのが安心です。

土地家屋調査士と司法書士の役割

土地の一部売却では、土地家屋調査士と司法書士の両方が関係することがあります。

土地家屋調査士の役割

土地家屋調査士は、分筆登記や測量を担当します。

具体的には、次のような業務です。

  • 土地の資料調査
  • 現地測量
  • 境界確認
  • 境界確認書の作成
  • 分筆案の作成
  • 地積測量図の作成
  • 分筆登記の申請

司法書士の役割

司法書士は、売買後の所有権移転登記などを担当します。

たとえば、分筆後の土地を買主名義にする登記、抵当権の抹消、住所変更登記などが関係します。

土地家屋調査士は表示に関する登記、司法書士は権利に関する登記を扱うと考えるとわかりやすいです。

よくある質問

Q. 土地の一部だけを売ることはできますか?

できます。

ただし、売却する部分を登記上独立させるため、通常は分筆登記が必要です。

Q. 分筆しないで一部だけ売ることはできますか?

実務上は難しいことが多いです。

売却部分を明確にし、買主名義に所有権移転登記をするためには、分筆して別の土地にする必要があります。

Q. 土地の一部を売る費用はいくらですか?

分筆登記を含む測量費用として、30万円〜80万円程度が目安です。

土地の広さ、隣地の数、官民境界の有無、資料の状況によって変わります。

Q. 土地の一部を売るにはどのくらい時間がかかりますか?

一般的には1か月〜3か月程度が目安です。

ただし、境界確認や官民境界確認が必要な場合は、それ以上かかることもあります。

Q. 一部を売った後、残りの土地が建て替えできなくなることはありますか?

あります。

売却後に残る土地の接道条件や形状が悪くなると、建て替えや利用に支障が出る可能性があります。

分筆前に必ず確認しましょう。

まとめ|土地の一部売却では分筆と境界確認が重要

土地の一部だけを売る場合、通常は分筆登記が必要です。

売却する範囲を登記上明確にし、買主へ所有権移転登記をするためです。

重要なポイントは次のとおりです。

  • 土地の一部だけを売ることは可能
  • 売却部分を明確にするため分筆登記が必要
  • 分筆には測量と境界確認が必要になる
  • 売る土地だけでなく残る土地の使いやすさも確認する
  • 残る土地の接道条件に注意する
  • 農地の場合は農地法の確認が必要
  • 共有名義の場合は共有者との調整が重要
  • 費用は30万円〜80万円程度が目安
  • 期間は1か月〜3か月程度かかることがある
  • 分筆は土地家屋調査士、所有権移転は司法書士が担当する

「庭の一部を売りたい」
「隣地に土地の一部を譲りたい」
「相続した広い土地を一部売却したい」
「土地を分けてから売りたい」

このような場合は、売買契約を急ぐ前に、土地家屋調査士へ相談し、分筆できるか、境界確認が必要か、残る土地に問題が出ないかを確認しておきましょう。

監修者情報

監修:北川 巧(土地家屋調査士)

独立2年目ながらも持ち前の若さと体力を活かして、顧客への迅速で新設な対応で、日々業務に取り組んでいます。不動産の表示に関する登記や土地家屋調査士の業務について一般の方目線で分かりやすくアドバイス、解説します。

監修者情報

監修:北川 巧

(土地家屋調査士)

独立2年目ながらも持ち前の若さと体力を活かして、顧客への迅速で新設な対応で、日々業務に取り組んでいます。不動産の表示に関する登記や土地家屋調査士の業務について一般の方目線で分かりやすくアドバイス、解説します。

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