土地を分筆できないのはどんな場合?境界・共有・接道など登記が進まない原因を解説

一筆の土地を売却、相続、贈与、土地活用などのために複数に分ける手続きを「分筆登記」といいます。

土地の所有者が希望すれば、自由な位置で簡単に分けられると思われるかもしれません。

しかし、実際には、

「境界がわからず分筆できないと言われた」
「隣地所有者が立会いに応じてくれない」
「共有者の一人が反対している」
「分筆すると建物を建てられないと言われた」
「農地を分けて売りたいが手続きが進まない」
「抵当権がある土地は分筆できるの?」

といった問題が発生することがあります。

結論からいうと、土地を分筆できないケースには、大きく分けて次の3種類があります。

  1. 境界や土地の位置を特定できず、分筆登記の前提を整えられない
  2. 所有者や相続人など、申請権限を持つ人を確定できない
  3. 分筆登記自体は可能でも、売却・建築・転用など本来の目的を達成できない

特に重要なのは、「法務局で分筆登記ができないこと」と「分筆しても希望する土地利用ができないこと」は別問題だという点です。

この記事では、土地を分筆できない主な原因と、それぞれの対処法をわかりやすく解説します。

目次

分筆登記とは?

分筆登記とは、登記上の一筆の土地を複数の土地に分ける手続きです。

たとえば、1000番という土地を2つに分けると、一方は1000番1、もう一方は1000番2などの新しい地番になります。

分筆登記が必要になりやすいのは、次のような場面です。

  • 土地の一部だけを売却する
  • 相続した土地を兄弟で分ける
  • 親の土地の一部を子に贈与する
  • 宅地部分と道路部分を分ける
  • 農地と宅地部分を分ける
  • 広い土地を複数の建築敷地に分ける
  • 一部だけを事業用地として利用する

分筆登記を申請するには、分筆後の土地の形状・面積・境界点などを示した地積測量図を作成する必要があります。

不動産登記の基本的な制度については、e-Gov法令検索「不動産登記法」や、e-Gov法令検索「不動産登記規則」でも確認できます。

「分筆できない」には2つの意味がある

土地の分筆について相談したときに「このままでは分筆できません」と言われても、その意味は一つではありません。

状況意味
登記手続きの前提が整わない境界や所有者を特定できず、分筆登記を申請できない
分筆登記は可能だが目的を達成できない分筆後の土地に建物を建てられない、売却できないなど
現時点では進められない相続人調査、境界確認、行政協議などが必要
希望する分け方では進められない分筆線や面積を変更すれば進められる可能性がある

したがって、「分筆できない」と言われた場合は、まず次の点を確認する必要があります。

  • 法務局への分筆登記自体が難しいのか
  • 希望する位置で分けられないのか
  • 分筆後の売却や建築ができないのか
  • 境界確認や許可を先に行えば進められるのか

原因が違えば、必要な対処法も変わります。

境界を特定できない場合

分筆登記が進まない代表的な原因が、土地の境界を特定できないケースです。

分筆登記では、新しく設ける分筆線だけを測ればよいわけではありません。

原則として元の土地の外周を確認し、分筆後の各土地の形状と面積を地積測量図に表示する必要があります。

ところが、次のような場合は境界の確認に時間がかかります。

  • 境界杭が見つからない
  • 古い地積測量図しかない
  • 公図と現地の形が大きく違う
  • 隣地所有者と境界の認識が一致しない
  • 道路や水路との官民境界が未確認
  • 山林などで境界の手がかりが少ない
  • 地図混乱地域で土地の位置関係が不明確
  • 過去の測量資料が残っていない

境界を十分に特定できなければ、正確な地積測量図を作れず、希望する内容で分筆登記を申請することが難しくなります。

隣地所有者が立会いを拒否すると分筆できない?

隣地所有者が境界立会いを拒否した場合でも、拒否されたという理由だけで直ちに分筆登記が不可能になるとは限りません。

また、隣地所有者の署名押印がないことだけで、必ず申請できないと決まるわけでもありません。

重要なのは、登記資料、現地の境界標、過去の測量成果、道路資料などから、筆界を客観的に確認できるかどうかです。

ただし、隣地所有者の協力が得られず、境界についても意見が対立している場合は、通常の確定測量だけでは進まないことがあります。

その場合は、次の方法を検討します。

  • 過去の境界確認書や地積測量図を探す
  • 周辺土地の測量資料を調査する
  • 再度、隣地所有者へ説明する
  • 境界確認の方法を見直す
  • 筆界特定制度を利用する
  • 境界確定訴訟を検討する

筆界特定制度で確認されるのは、不動産登記法上の「筆界」です。

所有権の範囲、時効取得、越境物の撤去などで争いがある場合は、弁護士への相談が必要になることがあります。

所有者や相続人を確認できない場合

分筆登記は、申請権限のある人が行う必要があります。

登記名義人が存命で、現在の所有者と一致していれば比較的わかりやすいですが、次のようなケースでは権利関係の整理が必要です。

  • 登記名義人が亡くなっている
  • 相続登記がされていない
  • 相続人が多数いる
  • 相続人の一部が行方不明
  • 遺産分割について争いがある
  • 売買後も所有権移転登記がされていない
  • 登記名義人と実際の所有者の認識が異なる

登記名義人が亡くなっていても、相続関係を証明できれば分筆を進められることがあります。

しかし、相続人が誰かわからない、相続人間で争いがあるなど、申請権限を確認できない場合は、その整理が終わるまで分筆登記を進められないことがあります。

この場合は、土地家屋調査士だけでなく、相続登記を扱う司法書士や、相続紛争を扱う弁護士との連携が必要です。

共有者が反対している場合

共有名義の土地でも、共有であるという理由だけで分筆登記が当然にできなくなるわけではありません。

ただし、共有地を分筆する目的が「分筆後の土地を共有者それぞれの単独所有にすること」であれば、分筆登記だけでは目的を達成できません。

たとえば、兄弟2人が2分の1ずつ共有している土地を2筆に分けても、原則として分筆後の両方の土地について、兄弟がそれぞれ2分の1ずつ共有している状態が続きます。

手続き内容
分筆登記一筆の土地を登記上複数に分ける
共有物分割共有者間で土地の帰属を決める
所有権移転登記持分を移転し、各土地を単独所有にする
代償分割等一人が土地を取得し、他の共有者へ金銭を支払う

共有者間で分け方、費用負担、取得する土地について合意できなければ、分筆後の権利整理まで進められないことがあります。

そのため、共有地では測量を始める前に、共有者間で最終的な目的を確認することが大切です。

公図・登記面積・現況の不一致が大きい場合

土地によっては、登記簿、公図、地積測量図、現地の状況が一致しないことがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 登記簿面積と実測面積が大きく違う
  • 公図上の土地の形と現況が異なる
  • 対象地の位置を現地で特定できない
  • 隣接地番の並びが現況と一致しない
  • 同じ範囲について複数の登記が疑われる
  • 道路や水路の位置が公図と大きく違う

軽微な差であれば資料調査や測量で整理できることもあります。

しかし、土地の位置や範囲そのものを特定できない場合は、すぐに分筆登記へ進めないことがあります。

場合によっては、地図訂正、地積更正登記、筆界特定、関係所有者との協議などを先に行う必要があります。

分筆すると接道しない土地ができる場合

分筆線の引き方によっては、分筆後の土地が道路に接しなくなることがあります。

一般的に建物を建てる敷地は、建築基準法上の道路に一定の幅で接している必要があります。

そのため、奥側の土地が道路に接しない形で分筆すると、その土地に建物を建てられない可能性があります。

ただし、これは主に分筆登記そのものの可否ではなく、分筆後の建築可否の問題です。

法務局で土地を分けられたとしても、次のような土地になれば利用価値が大きく下がる可能性があります。

  • 建築基準法上の道路に接していない
  • 接道幅が不足している
  • 通路が狭すぎる
  • 旗竿地の通路部分が基準を満たさない
  • 接している道が建築基準法上の道路ではない

建築目的で分筆する場合は、測量を始める前に自治体の建築指導担当部署や建築士へ確認する必要があります。

建築基準法については、e-Gov法令検索「建築基準法」も参考になります。

分筆後の土地が小さすぎる場合

自治体の都市計画や条例などによって、建築敷地の最低面積が定められていることがあります。

たとえば、最低敷地面積が120平方メートルと定められている地域で、100平方メートルずつに分けると、分筆後の土地に新しく建物を建てられない可能性があります。

ここでも、次の2つを分けて考える必要があります。

  • 法務局で土地を分筆できるか
  • 分筆後の土地を建築敷地として使えるか

最低敷地面積を下回っていても、分筆登記自体が直ちに不可能とは限りません。

しかし、住宅用地として売却する目的であれば、建築できない土地を作っても目的を達成できません。

また、自治体独自の開発指導要綱や条例によって、最低区画面積が定められている場合もあります。

農地を分筆する場合

地目が田や畑の土地でも、分筆登記自体が必ず禁止されているわけではありません。

ただし、分筆後の農地を売却、贈与、宅地化する場合は、農地法上の許可や届出が必要になることがあります。

目的主に確認すること
農地のまま売買・贈与する農地法第3条の許可など
農地を宅地や駐車場に変える農地転用の許可・届出
一部だけ転用する転用範囲の分筆や測量
農振農用地区域内の農地農用地区域からの除外の可否
開発や造成を伴う開発許可・盛土規制など

つまり、農地は「分筆できない」というより、分筆後に予定する売買や転用について行政許可を得られず、計画を進められないことがあります。

農地法については、e-Gov法令検索「農地法」を確認してください。

農地転用は農業委員会や行政書士、分筆・測量・地目変更登記は土地家屋調査士に相談します。

抵当権や差押えがある場合

住宅ローンや事業融資の抵当権が設定されている土地でも、抵当権があるという理由だけで、分筆登記が必ずできないわけではありません。

一般的には、分筆後の各土地にも抵当権の効力が及びます。

ただし、分筆した一部だけを売却する場合は、その土地について抵当権を外してもらう必要があります。

金融機関が一部解除に同意しなければ、分筆登記ができても一部売却は進められません。

また、差押え、仮登記、賃借権などがある場合も、分筆後の取引や権利整理に影響します。

したがって、分筆前には登記事項証明書の権利部を確認し、必要に応じて金融機関や司法書士へ相談することが重要です。

建物をまたぐ位置で分筆する場合

建物が建っている土地でも、土地の分筆が直ちに禁止されるわけではありません。

しかし、建物をまたぐ位置に分筆線を設けると、次のような問題が生じることがあります。

  • 建物の敷地が複数筆にまたがる
  • 一方の土地だけを売却しにくい
  • 建築基準法上の敷地設定が不明確になる
  • 住宅ローンや抵当権の整理が必要になる
  • 建物と土地の所有者が異なる状態になる
  • 建物の一部が越境する形になる

そのため、建物がある土地では、単に面積だけで分筆線を決めず、建築士、不動産会社、司法書士、金融機関などと確認する必要があります。

土地区画整理・開発区域・自治体の規制がある場合

土地が土地区画整理事業の区域内、開発予定地、都市計画道路予定地などにある場合は、通常の土地より手続きが複雑になることがあります。

また、大規模な造成や複数区画への分割では、都市計画法上の開発許可や自治体条例が関係することがあります。

分筆登記だけを先に行うと、後から計画を変更しなければならない可能性があります。

次のような土地では、測量前に自治体へ相談しましょう。

  • 土地区画整理事業区域内
  • 仮換地指定を受けている
  • 市街化調整区域
  • 開発許可が必要な規模
  • 都市計画道路予定地
  • 建築協定・地区計画の区域
  • 最低敷地面積が定められている区域

分筆できないと言われた場合の対処法

分筆が難しいと言われても、すぐに計画を諦める必要はありません。

原因に応じて、次のような対処を検討します。

原因主な対処法
境界が不明資料調査、再測量、境界立会い
隣地と意見が合わない再協議、筆界特定、境界確定訴訟
相続未了相続人調査、相続登記、遺産分割
共有者と合意できない共有物分割協議、分筆案の見直し
接道不足通路部分を確保するよう分筆線を変更
面積不足分筆後の面積配分を変更
農地転用できない利用計画や対象範囲を見直す
抵当権を外せない金融機関と一部解除を協議
公図と現況が違う地積更正、地図訂正などを検討
行政規制がある自治体と事前協議する

重要なのは、分筆線を決める前に、最終的な目的を明確にすることです。

分筆前に確認する流れ

【分筆前の確認の流れ】

分筆する目的を整理する

登記事項証明書・公図・地積測量図を確認する

抵当権・共有・相続など権利関係を確認する

土地家屋調査士が現地と境界資料を確認する

接道・最低敷地面積・農地規制を確認する

分筆案を作成する

隣地・道路との境界を確認する

地積測量図を作成する

法務局へ分筆登記を申請する

必要に応じて売買・贈与・所有権移転を行う

土地家屋調査士へ相談するときは、「何平方メートルに分けたい」という希望だけでなく、売却、相続、建築、贈与などの目的も伝えましょう。

よくある質問

Q. 隣地所有者の同意がないと絶対に分筆できませんか?

隣地所有者の署名押印がないという理由だけで、直ちに分筆できないとは限りません。

ただし、境界を客観的に特定できなければ、正確な地積測量図を作れず、登記が難しくなることがあります。

Q. 共有者の一人が反対していても分筆できますか?

共有地だから直ちに分筆できないわけではありませんが、分筆後の土地を各共有者の単独所有にするには、共有物分割や持分移転などが別途必要です。

最終的な目的まで進めるには、共有者間の合意が必要になることが多いです。

Q. 接道していない土地に分筆できますか?

分筆登記自体ができる場合はあります。

ただし、分筆後の土地が建築基準法上の道路に接しなければ、建物を建てられない可能性があります。

Q. 抵当権がある土地は分筆できますか?

抵当権があっても分筆できる場合があります。

ただし、分筆後の一部だけを売却するには、金融機関と抵当権の一部解除を協議する必要があります。

Q. 農地は分筆できませんか?

農地でも分筆できる場合があります。

ただし、分筆後に売却や転用を予定している場合は、農地法上の許可・届出を確認する必要があります。

まとめ|分筆できない原因は登記・境界・土地利用を分けて確認しよう

土地を分筆できないといわれる原因は、一つではありません。

境界や申請権限の問題で登記手続き自体を進められない場合もあれば、分筆登記は可能でも、建築や売却など本来の目的を達成できない場合もあります。

重要なポイントは次のとおりです。

  • 分筆登記には分筆後の土地を特定できる地積測量図が必要
  • 境界を特定できない場合は分筆登記が難しくなる
  • 隣地の署名押印がないだけで直ちに分筆不能とは限らない
  • 相続人や申請権限を確認できない場合は先に権利関係を整理する
  • 共有地を分筆しても共有状態は自動で解消されない
  • 接道しない土地でも登記上分筆できる場合があるが、建築できない可能性がある
  • 最低敷地面積を下回ると、分筆後の建築に影響する
  • 農地は分筆登記と農地法上の許可を分けて考える
  • 抵当権があっても分筆できることがあるが、一部売却には金融機関との協議が必要
  • 土地区画整理や開発規制がある土地は自治体への事前確認が必要
  • 分筆線を決める前に、売却・相続・建築など最終目的を整理する

「分筆できると思って測量を始めたが、建物を建てられなかった」
「分筆後の土地を売却できなかった」
「境界や共有者の問題で手続きが止まった」

このような事態を避けるためにも、分筆を検討した段階で土地家屋調査士に相談し、権利関係や行政規制も含めて確認することが大切です。

監修者情報

監修:北川 巧(土地家屋調査士)

独立2年目ながらも持ち前の若さと体力を活かして、顧客への迅速で新設な対応で、日々業務に取り組んでいます。不動産の表示に関する登記や土地家屋調査士の業務について一般の方目線で分かりやすくアドバイス、解説します。

監修者情報

監修:北川 巧

(土地家屋調査士)

独立2年目ながらも持ち前の若さと体力を活かして、顧客への迅速で新設な対応で、日々業務に取り組んでいます。不動産の表示に関する登記や土地家屋調査士の業務について一般の方目線で分かりやすくアドバイス、解説します。

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